事例本文(シャボン玉石けん)

出典:ITSSP講演事例 IT Coordinators Association
事例本文
事例番号:45 シャボン玉石けん(株)   事例発表日:平成13年1月17日
事業内容:石けん製造・販売
売上高:不明 従業員数:93名 資本金:3億円 設立:1949年5月
キーワード 無添加石けん製造・販売、
コールセンター、
CTI、インターネット販売
無添加石けんと、その販売戦略
 

シャボン玉石けん(株) URL:http://www.shabon.com/

シャボン玉石けん(株)お客様相談室長 平安寿美子氏
プロフィール

 お客様からのクレーム処理のほか、会報の作成、ホームページ作成・更新、工場見学(昨年は約1万人)を担当。また、要望により石けんや環境問題についての講演を各地で行っている。新入社員教育も担当。

~お客様と信頼を結ぶCTIによるコールセンター~

 シャボン玉石けんといえば無添加石けんの製造販売で業績を伸ばしている企業である。売上高の約半分を通信販売が占め、その受注を支えているのがコールセンターだ。全国からひっきりなしにかかってくる電話をいかに効率よく、しかも真心込めたマンツーマンの応対で処理するのがポイント。Webショップの展開も行っている。パソコン導入以前から受注業務の現場に関わってきた平安氏に、CTI導入のいきさつから成果までを伺った。


■前年度比2ケタ台の受注の伸びについにパソコン導入、そしてCTI導入
  以前、当社は合成洗剤の製造販売をしていて順風満帆でしたが、社長自らの湿しんの体験を機に化学物質を使わない無添加石けんの製造販売に切り替え17年間赤字に苦しんできたと聞いています。しかし、徐々にユーザーが増え、平成3年3月に社長が出版した、自然流「せっけん」読本への反響も出てきました。私はちょうどその頃に入社しました。
  当時の状況は、通信販売の受注処理に女性社員が2、3人しかいなくてんてこ舞でした。コンピュータなどまだなくて電卓と算盤を駆使していました。売上がどんどん上がっていくのに人手が足りず、5日前に受けた伝票を処理しているような最悪の時もありました。その対策として、平成3年11月にパソコンを1台入れ、顧客台帳3,000件のデータを移行しました。その後も売上は前年度比2ケタ台、だいたい20%増のペースで増えていったためパソコンは2台、4台、8台と、まるで家の建て増しのように増えていきました。
  しかし、それでも処理が追いつかない状況になったため、平成9年、NTTのナンバーディスプレイを組み込んだCTI(コンピュータテレフォニインテグレーション)を導入したのです。CTIとは、電話とコンピュータを連動させた受注システムのことで、当社にベストなシステムを組むため導入準備には約1年を費やしました。ベテラン社員も新入社員も色々な要望、条件を掲げて、そこからだぶっているもの、要望の強いものというふうにランクづけをして絞り込み、ミーティングを重ねてようやくシステムが完成、コールセンターが稼働したのは平成10年の3月です。20台のパソコンをLANで繋ぎ、情報を共有化できるようにしました。

■電話を受ける時点でお客様の情報が画面で把握できる
  ナンバーディスプレイですから、お客様から電話が来た時点で、今までに1度でも買っていただいたことのある方でしたら、そのお客様に関する情報が画面に立ち上がっています。オペレータはそれを見ながらヘッドフォンで電話を受けます。例えば山口県にお住まいの田中様で、3カ月前に浴用石けん12個入りを何箱と、粉石けん何個購入していて、その入金の状況もわかります。具体的には「はい、シャボン玉石けんの平安でございます。ご注文でいらっしゃいますか、以前ご注文がございますか」と入っていき、電話番号、会員番号などから「山口県にお住まいの田中様ですね」とわかり「では、ご注文をどうぞ」と注文のページに入り、商品コードと数量を打ち、お届け先の確認をして「私、平安が承りました。ご注文どうもありがとうございました」という応対になります。
  当社の製品は特殊であることから原料、包材等に関するお客様からの質問も非常に多く、それに十分答えられるよう各種勉強会を行っています。それで知識をしっかり身につけ、合わせて画面上に商品情報が入って説明できるようになっています。また、「神奈川県の山本だが、いつものところにいつものものを送ってくれ」という注文にもすでにナンバーディスプレイでお客様が確定できていますので履歴情報から速やかに対処できます。実際に画面を見たらお客様から入金がまだされていないことがわかる場合もあり、そのような時にも失礼のないよう電話の応対の中で確認していくことができます。さらによくあるのが、電話で注文いただいて10分くらいしてから再度かかってきて「さっき注文したんだけれど、あれをもうちょっと追加してほしい」という類の電話です。オペレータは20人近くいて誰が受けるかわかりませんが、情報は全て共有化されていますから、瞬時にどのお客様のどの注文の件かわかり、追加注文も受けられます。出荷情報もわかりますし、品切れだった場合でも品切れ情報がすぐ出るのでその商品を何日後に製造、出荷し、いつお客様のもとに着くかをお知らせすることができます。
  このCTIによるコールセンターのオペレータは全員が営業社員だという認識をもって業務にあたっています。そうでなければ、お客様が電話をプッシュして流れるガイダンスの音声に従って、注文個数を入れれば良いというシステムで済んでしまいます。このシステムを利用してご注文をいただくということは、お客様と密接な関係でいられるための運営の方法なのだといえるでしょう。

■顧客15万人に対し、さらにバージョンアップした活用を目指す
  最初は3,000人だった顧客データ数は現在15万人になりました。この15万件の顧客データを持って電話がかかれば瞬時に情報が立ち上がるようになっているわけです。初めてのご注文の方でもオペレータが画面に郵便番号さえ打ち込めば、あとは番地だけ入力すればいいようになっています。
  平成11年1月にはホームページを立ち上げました。当初はまだホームページで利益を生むとという考えではなく、商品の特異性を全国の方々に知ってもらいたいという主旨でした。1日2、3件だったアクセス件数がどんどん更新していくうちに増え、昨年の11月からはさらに新しくホームページをリニューアル致しました。これは、今まであった要望を活かしたもので、Webショップもあります。そこでの受注は1日平均50~60件あります。情報としては、どこで買えるのか、石けんについてのこと、新着情報などです。当社製品の顧客は、北は宗谷岬から南は沖縄の端まで全国に渡っていますので、Webショップが適していると思います。
  一通り、システムができたところで、どんどん自分達にあったシステムにしていくため、工夫をこらしています。CTIでは、伝票発行、入金処理、荷札発行まで別々のセクションでやっていたものが、今では伝票発行と同時に荷札発行までできるようになりました。次のステップとして、当社仕様の形式による注文ハガキで、この注文ハガキがそのまま伝票となるようなものを目指しています。インターネットのWebショップからは、セキュリティがクリアできれば注文即伝票となるものを考えています。ホームページのバージョンアップも積極的に進めていきたいと思います。

■システムはオーダーメイドの洋服のようにフィットしていく
  CTIシステムの導入における初期投資は約6千万円といったところでしょうか。その後、例えば1つの伝票発行に時間がかかる、電話応対の流れと画面の流れが違うなどの課題が発生する部分を変えていっていますので、そこはシステム管理の費用となっています。しかし、費用はかかってもやればやるほどオーダーメイドの洋服のようにフィットしていきますから、必要なことだと思います。
  経営者側からすれば、以前の手作業でやっていた頃は残業がかなりあったものが、現在のシステム導入によりほとんどなくなったという点からも、投資効果は大きいのではないでしょうか。
  おかげさまでこれまで順調すぎるくらい受注が伸びてきました。お客様に対してインバウンドばかりで、会報を1カ月半に1度発行する程度のアウトバウンドしかやっておりませんが、今後は、注文を受けるばかりの応対でなく「先日発送した石けんがもうそろそろ無くなる時期ではございませんか、いかがでしょうか」とか商品の紹介などアウトバウンドしていくことも必要だと思います。そもそも現システムを構築する時にアウトバウンドできるものというのが前提でしたから、半年前、1年前、2年前とデータを瞬時に把握できるようになっていて、そういう意味では武器は持っているけれども使いこなしていない状況です。コストをかけない方法のアウトバウンドとしては、電子メールで新商品の情報などのご案内を始めています。

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